鳥居みゆき単独ライブ 狂宴封鎖的世界「方舟」


鳥居みゆき単独ライブ 狂宴封鎖的世界「方舟」
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問題作……ただ、それ以上に傑作。宗教アレルギーを持つ日本人に捧げられた、鳥居みゆきの処方箋。

パッケージ化不可と言われた単独ライブ『 狂宴封鎖的世界「方舟」』が奇跡のDVD化!
鳥居みゆきの信奉者にとって第一級の聖典であると同時に、不謹慎を忌み嫌う人にとってはこの上なく恐ろしい「悪の教典」でもある、何度も見返す価値のあるライブ!
 
コンテンツリーグ・ホームページのみの限定販売商品!
 
本作は、作者の制作意図を尊重するため、残酷なシーンや暴力等、過激な表現も収録しております。
不快な印象を与える場合がありますので、特にお子様のご視聴に際しましては、
十分なご注意をいただきますようお願いいたします。


品番:CLDS-2001 価格:¥3,800 + 税
発売日:
発売元:株式会社Contents League
販売元:株式会社Contents League

鳥居みゆき単独ライブ 狂宴封鎖的世界「方舟」

「宗教とは何か?」

鳥居みゆき単独ライブ 狂宴封鎖的世界「方舟」 この問いに正面切ってきちんと答えられる日本人はほとんどいないのではないだろうか。現代日本を生きる我々にとって、「宗教」というもののイメージはあまり良いとは言えない。クリスマスにケーキを食べ、初詣に神社へ行き、葬式では坊主がお経を唱える日本という国では、特定の宗教の輪郭を具体的に思い描くことが難しい。

世の中の人々の印象に強く残っているのはむしろ、オウム真理教による地下鉄サリン事件のような、新興宗教が起こした社会的なトラブルの数々だ。1995年頃の一連のオウム騒動以降、日本人にとっての宗教とは、単にうさん臭いだけではなく、何をしでかすかわからない不気味で危険な存在というところまで落ちてしまった。

鳥居みゆき単独ライブ 狂宴封鎖的世界「方舟」 だが、一見すると無宗教に見えるこの国にも、確実に宗教的なものは存在している。その最大勢力とも言えるのが、東日本大震災直後ににわかに勢いを増した「不謹慎忌避教」だ。他人の不謹慎な発言や活動を厳しく取り締まり、正義の名の下に鉄槌を下す神聖なる組織。日本人の中のかなり多くの割合の人が、知らず知らずのうちにこの組織に身を置いている。

この宗教の戒律は「空気を読め」。不謹慎な言動は一切許さない。場の空気を壊すことは何よりも罪深いこととされている。目に見えない同調圧力が、さまざまな場面で人々の上にのし掛かり、この国を息苦しいものにしている。

特に2011年3月の震災直後には、不謹慎なジョークは(たとえ明らかに冗談として受け止められる文脈であっても)口にできないような雰囲気が広がっていた。当時、私は1人のお笑い愛好者として、その空気にどうしようもないほどの息苦しさを感じていたことをここに告白したい。そして、その種の自粛ムードは、社会全体に根深く残っているものだと思っている。

鳥居みゆき単独ライブ 狂宴封鎖的世界「方舟」 もちろん、誰もが無理に不謹慎な笑いを追い求める必要はない。ただ、エンターテインメントというものには本来、不謹慎かどうかといった倫理的な枠組みを飛び越えて、人を笑わせたり感動させたりする力が秘められている。

転んで怪我をして泣いている子供に必要なのは、消毒液と絆創膏だけではないはずだ。他愛もないジョークでその子が少しでも笑顔になったなら、それはそれで価値のあることだと言えるのではないだろうか。

そんな「不謹慎忌避教」が蔓延する日本社会において、異色の存在と言えるのが鳥居みゆきだ。2000年代後半のお笑いブームのどさくさに紛れて世に出てきたこの女性芸人は、不謹慎そのものを体現した危険な芸風でお茶の間に衝撃を与えた。どこまでが演技でどこまでが本気なのか見当もつかない狂気的な振る舞い。どぎつい設定やせりふの奥に深いテーマを宿している重厚な1人コント。鳥居はいわゆる「ピン芸人」の枠に収まらない唯一無二の存在として、じわじわと熱狂的なファン(信者)を獲得してきた。

彼女は恐らく、奇をてらって不謹慎なネタをやっているわけではない。むしろ、揺るぎない信念に基づくパフォーマンスでテレビとライブの世界を行き来しながら、「不謹慎忌避教」に染められた世の中を華麗にもて遊んでいるように見える。

鳥居みゆき単独ライブ 狂宴封鎖的世界「方舟」 2012年9月、そんな彼女のライフワークとも言える単独ライブ『狂宴封鎖的世界「方舟」』が行われた。今回のテーマは「宗教」。巨大隕石が地球に接近して、終末ムードが漂っている世の中。鳥居演じる女性の前に現れたのは、「方舟」によって人々を救う道を説く怪しげな新興宗教。彼女は戸惑いながらも方舟に乗り込み、信仰の道を歩み始める……。

もともと過激な持ちネタの多い鳥居だが、今回の公演はその中でも最高純度の危なっかしい表現に満ちている。冒頭からショッキングなシーンの連続で、見る者はあっという間にこの物語世界の虜になる。たたみかけられる毒々しい描写は、「不謹慎忌避教」に染まった脳に衝撃を与えて、その凝り固まった部分を優しく解きほぐしていく。この公演そのものが、私たちの中に潜む宗教的な信念を明らかにして、それを相対化する役目を果たしてくれる。

そう、これは「宗教そのものにまつわる物語」であると同時に、「宗教的なものを信じずにはいられない人間の『業』にまつわる物語」でもあるのだ。鳥居はこの物語に明確なオチをつけたり、特定のメッセージを訴えかけたりはしていない。

鳥居みゆき単独ライブ 狂宴封鎖的世界「方舟」 「宗教とは何か?」
その問いに対する答えは、見る人がそれぞれに探すべきものだ。

……ちょっと小難しい話をしすぎたかもしれない。くれぐれも断っておきたいのだが、このライブは、ここまで述べたような堅苦しいうんちくを抜きにしても素直に楽しめるポップな内容だ。物語が進んでいく過程では、ちょっとした言葉遊び、時事ネタ、下ネタなどもちりばめられていて、笑いどころはたくさんある。逆に言えば、ここまで哲学的なテーマを内に秘めていながら、お笑いとして普通に楽しめる枠組みからは決して逸脱しないというところに、芸人・鳥居みゆきの独創性がある。

鳥居みゆき単独ライブ 狂宴封鎖的世界「方舟」 この作品は、宗教アレルギーを持つ日本人に捧げられた、鳥居ドクターの処方箋である。本質的な主題らしきものは要所要所のせりふの中でさりげなく提示されているし、細かい小道具や演出にも気の利いた仕掛けが施されていて、何度も見返す価値のあるライブとなっている。この公演が映像ソフトとして楽しめるのは実に喜ばしいことだ。

このDVDは、鳥居みゆきの信奉者にとって第一級の聖典であると同時に、不謹慎を忌み嫌う人にとってはこの上なく恐ろしい「悪の教典」でもある。個人的には、鳥居みゆきという芸人のことをテレビで何となく見ていて、そこにある種の「不謹慎さ」を感じて苦手意識を持っている人にこそ、この作品を見てもらいたいと思う。鳥居みゆきは、あなたが今信じているものの正体を暴き出して、本当に信じるべきものは何なのかということを改めて問いかけてくれる。「不謹慎」という言葉の向こう側に広がっている雄大な景色をぜひ一度覗いてみてほしい。

このDVDは問題作である。ただ、それ以上に傑作だ。