「滑舌が悪い」「考えが卑屈」……それがなんだと言うのだ。普通なら弱点になることが、三四郎にとっては強みとなる。だからこそ、彼らにしかできない漫才が作られてゆく。
11本の珠玉の漫才を詰め込んだファーストDVD『一九八三』のリリースを記念したインタビュー!

 
●初のDVD『一九八三』発売が決まった時の感想を教えてください。
小宮浩信(以下:小宮):「ニーズがあるのかな、買ってもらえるのかな」と思いました。
相田周二(以下:相田):そこの心配をするんだね。
小宮:心配はしたんですけど、パンダユナイテッドがすでに発売しているという話を聞いて、それなら大丈夫かな、と。
相田:どこに勇気づけられてるんだよ! ウエストランドにしておきなさいよ(笑)。
小宮:ウエストランドはけっこう知名度あるけど、パンダユナイテッドはそんなにないから。
相田:失礼だよ!
小宮:ただ、パンダユナイテッドは僕が大好きな園子温監督にハマっているらしく、園監督の映画『地獄でなぜ悪い』に出てるんですよ。それまで感情移入していたのに、身近な芸人が出てきて、ちょっと冷めました。
相田:まぁね、あの映画は非現実的な世界を描いていたから……。僕はリリースの話を聞いて、「売らなきゃな」と思いましたね。ジグザグジギーのDVDがけっこう売れているという話を聞いたので、それよりは売れたい。ジグザグジギーより売れて、自ずとツィンテルより販売枚数を増やす。そこが目標です。
 
●『一九八三』はおふたりが生まれた年ですが、このタイトルに込めた意味は?
小宮:僕は日頃、虐げられて生きてきました。バイトでイヤなことがあったら、先輩への悪口を羅列し、それがネタになったりして。僕を形成してきたすべてを漫才に置き換えて表現しているので、生年をタイトルにしました。
相田:内容がそれで、ジャケットがコレだと、相当怖いよね(笑)。
 
●ジャケットは、市川崑監督作品のような趣がありますね。
相田:単独ライブで、こんな感じのチラシを一度作ったことがあって、すごく気に入ってたんですよ。僕らはカラフルな写真を使うようなキャラでもないし、あまりニコニコしているタイプでもないし。
小宮:ジャケットをちょっと怖い感じにして、なんとなく中身を伝えるよう、先手を打っています。
 
●DVDは漫才のみを11本収録という、ストレート真っ向勝負ですね。
小宮:月に20本くらいライブに出させてもらって、漫才を中心に頑張っているので、ネタのみを楽しんでいただきたいと思い、こういう構成にしました。
 
●おふたりの漫才は、どこまでがネタで、どこからがアドリブなのかわからないスリル感があります。
小宮:同じことを2回やるのがあまり好きじゃないのと、観ている人が「台本があるんだな」と思ったら冷める部分があるんじゃないかな、と。だから毎回、アドリブ感は重視しています。
 
●昔のものから最近のネタまで幅広く収録されていますが、この11本の中でお気に入りは?
小宮:「高円寺」は初めて『M−1グランプリ』で準々決勝まで行かせてもらったネタなので、思い出深いですね。ネタとしてはアドリブ感のない、今まで僕らがやっていないタイプなので、思い入れが強いというか。一番、練習したネタでもあります。特に最初の頃は、舞台でうまくできずボロボロになったこともあったし。
相田:僕は“高円寺クイズ”を出すほうだから間違えちゃいけないんですけど、番組でやった時にネタを忘れて1分間フリーズしたことがあって。小宮は答える側だから、セリフのヒントを出したら設定がおかしくなってしまう。とにかく困りました。
小宮:絶対に、ミスできないネタなんです。
相田:だから怖いんですけど、“決まっている感”が一番高いし、初めて賞レースで評価されたネタなので、僕も思い入れは強いです。
小宮:相田のセリフのほうが多い唯一のネタなんですよ。
 
●だからでしょうか、他のネタと比べると異質感がありますよね。
小宮:「高円寺」みたいなネタがあると、「いろんなことをやっているな」と見てもらえるところはありますね。
 
●一方、相田さんのお気に入りのネタは?
相田:最初に収録されている「ドリフ」と、最後の「桐島」ですかね。「ドリフ」は5年前からやっているし、「桐島」は単純にやっていて楽しい。
 
●「桐島」は、いろんな意味ですごいネタですよね。「これでDVDを締めるのか」と、びっくりしました。
相田:DVDに入れられるかどうか、ちょっとドキドキしました(笑)。最初にこのネタをやると疲れちゃうので、最後に持って来たんですよ。
小宮:僕はお笑いが大好きでこの世界に入ったんですけど……。
相田:そりゃ、そうでしょ(笑)。
小宮:いや、僕は他の芸人よりお笑いが好きだと思う。それで、テレビだけじゃなくお笑いの動画を観たりラジオを聴いたり、ライブにも行っていますが、今まで観たことのないパターンのネタを観ると、「観ることができてよかったな」と嬉しくなるんです。そういうネタを作りたくて、できたのが「桐島」。今まで観たことのないネタを、作りたいと思ったので。
相田:今、同じようなことを、2回言いましたね?
小宮:伝えたいからです(笑)。
 
●DVDの収録はお客さんを入れて3月初旬に行なわれたそうですが、いかがでしたか?
小宮:やっぱりお客さんがいないと、笑いが起きるか不安になっちゃうんです。
相田:笑い声が薄いと、心が折れちゃうしね。
小宮:「桐島」みたいな大声で叫ぶネタをやっていて、笑い声がないとただの虚無感しかなくなりますから……。自分たちでも「何やってんだろ?」と(笑)。
 
●ネタ中の放送禁止音の多さにもびっくりしました。
相田:表現をマイルドにしたDVD専用のオチを作るよりも、そのままやって「オチで“ピーッ”となっても、いいんじゃないか」と。危険なワードを変えちゃうと、面白くなくなってしまうんですよね。いい意味でも悪い意味でも“生感”が強く、「こんな感じでライブをやっています」と紹介できるようなDVDになっています。オチが聴きたかったら、ライブに来てください。
 
●本作の見どころは?
小宮:ほとんどお笑いを見たことのない人が最初にこのDVDを観たら、あまり面白くないと思います。僕らはオーソドックスな漫才ができないからこういう形になったので、基礎がしっかりしている芸人のDVDを観てから『一九八三』を観てください。
相田:僕らの前に、パンダユナイテッドのDVDを観ていただいて(笑)。
 
●三四郎の漫才は、コアラやカンガルーなどの有袋類みたいな、独自の進化を遂げた独特さを感じるのですが、どういう経緯でこの域に達したのですか?
小宮:養成所に入った頃は、オーソドックスな漫才をやっていたんです。でもお客さんにはウケるけど、共演している芸人にウケない。芸人さんが笑ってくれないと、やっぱり寂しくて。今売れている人がライブに出ていた頃は、舞台袖に他の芸人が集まってネタを観ていたという話をよく聞くので、芸人さんに観てもらえるほうがいいのかなと。そこで、芸人さんが笑ってくれる、観てくれるものにシフトしました。あと、僕と相田は中学からの仲なんですが、昔は男ノリで遊んでいたのに、結成当初は女性のお客さんしか笑ってくれなかったので、「これはマズイぞ」と。昔の感じでやりたいなと思って、形式にとらわれず、本当に面白いことをやろうと考えたんです。
 
●確かにおふたりのネタは、教室の隅っこで男子が遊んでいる風の空気がありますね。でも、芸人さんウケを狙うと、逆にお客さんから笑ってもらえなくなったりして、その辺のさじ加減が難しくないですか?
小宮:最初の頃は、お客さんがひとりもいないライブにもよく出ていたんですよ。観客がいないので、芸人が客代わりになるんです。
相田:前半のネタは後半出る芸人が観て、後半になったら入れ替わって。
 
●それは、公演中止でよかったのでは?
小宮:なぜか中止しなかったんですよね(笑)。そこで、どのネタが芸人ウケするかを試して。そのネタを女性客の前でやって、ウケたところをどんどん残していったんです。
 
●このDVDを、どんな人に見ていただきたいですか?
小宮:「テレビのお笑いでは物足りない」と思っている人、ですね。お笑いライブに足を運ぶ人って、テレビじゃ物足りないから来ていると思うんです。そういう人が買って、喜んでくれたらいいなと。
相田:もしくはなかなかライブへ行くことのできない、地方の人にぜひ。
 
●最後に読者のみなさんへ、ひと言。
小宮:最近『ゴッドタン』や『アメトーーク!』に出させていただいたことで、僕のキャラが気になるけれど三四郎のネタは観たことないという人、いると思うんです。そういう人に、まずはこのDVDを観ていただきたいと思います。
相田:うん、本当にネタを観てもらいたいね。

 
 
商品詳細ページへ