昨年5年ぶりに復活を遂げた『M-1グランプリ』。出場資格はコンビ結成15年以内となり、実力を溜め込んできた総勢3,000組以上の漫才師たちがしのぎを削りました。今年も新たな漫才王者が誕生する12月。出場資格がなく悔しい思いをしつつも、漫才愛を叫んでやまない2組の漫才師、エルシャラカーニとマシンガンズに、漫才の魅力について語ってもらいました。

 
―エルシャラカーニとマシンガンズの出会い―
エルシャラカーニ清和(以下、清和):ネタ見せとかで会ってたよな。マシンガンズは会うたびにボケとツッコミがコロコロ変わって、全然ネタが定まってなかった。
マシンガンズ西堀(以下、西堀):我々はエルシャラカーニを一方的に知ってた。自由が丘の「サムチャイライブ」でエルシャラがトリだったんだよ。1999年くらいかなあ。
清和:あー(笑)! そうそう、まだサンミュージックに入る前ね。
西堀:最初見たときダウンタウンかと思った。ローなボケとチャキっとしたツッコミみたいな感じで。しろうさんも今みたいなキャラじゃなくて、もうちょっと朴訥で、今みたいにバカにされる人間じゃなかったですよね。
清和:そんなんやってたっけ。
エルシャラカーニしろう(以下、しろう):そうですね。えっ? バカにされてるんですか、今!?
西堀:されてないと思ったのかよ!
 
―漫才を始めたきっかけ―
マシンガンズ滝沢(以下、滝沢):コントは金がかかる。用意もしなきゃいけないし。
西堀:コンビ組んだとき、滝沢が、「俺は漫才だったら組んでもいい」って言ったんだよ。
清和・しろう:えー!
滝沢:そうそう。俺、爆笑問題さんに憧れてたから。太田さんになりたかったの。
西堀:だから初期は西堀と“太田さん”だったよ。ネタの感じも。切れ味の悪い太田さんみたいな。
滝沢:時事ネタみたいなのやってね。
清和:なんか思い返せばそんな感じあったかも。
西堀:俺は漫才でもコントでもどっちでもよくて、若かったから、どんな形であれ世に出るんだろうなって思ってた。
しろう:はははは!
清和:そんなん思ったことないわ(笑)。
西堀:そんなずっと漫才やるってことでもなくて。滝沢はピンもやってたから、「並行してやるならいいよ」って。結構上からな感じで始まったんだよ。
清和:へー! 知らなかった。
しろう:でも俺は初めて会ったとき、天才っぽいと思いましたよ。すごいコンビだなと思って見てました。面白いとかじゃなくて雰囲気が。できる感じが出てました。
滝沢:スカしてる感じだった(笑)?
清和:スカすよね、最初は。
しろう:僕らの場合は、清和さんが漫才好きだから。
清和:そう。僕はもう幼少の頃から花月だなんだ見て育ってるので、どうしても漫才が好きなんだけど、最初2、3年コントやってて。
滝沢:え!?
清和:しろうさんが漫才できないから、じゃあまずコントからっていう考えでやってた。
しろう:その当時から思ってたんですか?
清和:その当時から。
しろう:ほんと!?
清和:東京来て半年で前のコンビ解散になって、ほかに誰も組む人がいなかったときに、しろうを紹介されて。
しろう:それって本音でしょ? 清和さんってドラマチックじゃないんですよ。出会いの話とかすべて。
清和:どういうこと(笑)?
しろう:うそでもいいから「僕と組みたかった」でよくないですか?
滝沢:ははははは!
西堀:確かに清和さんってちょっと無粋なとこありますよね。粋じゃない。
清和:じゃあ粋な話してみろよ!
しろう:あ、ちょっともう、出てこないですけど。
滝沢:なかなかこんな会話ないですよね(笑)。
しろう:僕はそれこそ漫才、コントどっちでもよかったです。
西堀:それこそね(笑)。
清和:僕は子どもの頃から漫才を見てたから、漫才というものは、今と変わらず“すごいもの”というのがそのときからあって、簡単にできるものじゃないと。別にコントが下ってわけじゃなくて。コントだったらキャラを当てはめれば形にはなるけど、漫才はそのままの人間性が出なきゃダメだから。僕は1年先に始めてたけど、しろうはお笑い始めたてだったし、だからまずはコントで。
西堀:へー!
滝沢・しろう:だから僕は学校に入ってたわけですよね。「清和漫才学校」(笑)。
西堀:もうプロジェクトだ。
滝沢:卒業しないんですね。
しろう:まだできないんです(笑)。
清和:いつから漫才するようになったんだっけ?
しろう:コント師が漫才をやってみるライブがあったんですよ。
清和:そうだそうだ! 思い出した。DO-YOさん主催のライブ。そこからずっと漫才やってるんだ。
滝沢:そろそろいいかなって思ってた?
清和:多分。
滝沢:すごいな! こんなの初めて聞いた。
しろう:清和さんが「やっぱり漫才好きやわ」って言ったの覚えてます。
西堀:それ聞いてどう思いました?
しろう:「ああそうなん」って思いました。
西堀:あんたもドラマチックじゃないじゃん(笑)。

―漫才を続けるワケ―
滝沢:これがね、初舞台すごいウケたんですよ。「あーやっぱり才能がある」って思いましたよね。
清和:これはね、売れてない奴あるあるですよ。一発目ウケちゃう(笑)。
西堀:いまだにあんなウケたことないんじゃないの?
滝沢:ほんとにすごかった。リアルに会場揺れてたもん。トーナメント戦のライブで決勝まで行って、それこそDO-YOさんに負けたんですけど、「笑いの数では負けたよ」って言われた。
西堀:で、やっぱ向いてると。そこからですよね、地獄の日々は。
滝沢:2回目のライブからもうウケなかったもん、はははは! だから内容を変えたりね。それこそ西堀は漫才コントみたいなのをやりたがってて。僕はしゃべくりをやりたいと。
西堀:滝沢のほうがやりたいことが明確にあるんですよね。僕はウケたいから、みんながウケてる漫才コントをしたかったんですよ。当時主流だったし。で、滝沢がボケじゃ全然ウケないから、滝沢のせいだと思って「俺がボケる」って変わったんですよ。またウケないんですよ、はははは。で、最終的に「ボケがいない」って話になった。
滝沢:そう。“ボケ気”がないんですよ、俺ら2人とも。だから普通にしゃべってても俺ら全然ボケない。
西堀:そう、ふざけるけどボケない。
清和:行き着いたのが、2人ともツッコミ。
滝沢:9年目のとき。でももう辞めようと思ってたんだよね。お笑いを。
西堀:あんまりにウケてないから。
滝沢:で、ダブルツッコミやってみようよ、2人でキレて辞めようよって。そしたらまたウケたんですよ。だからまたね、そっから売れない日々が延長されたの。
西堀:最初は目の前にいる人に悪口言ってるんですよね。「お前らはお笑いライブを見に来てるのに、笑わないとか生意気だぞ」とか。そういうことをただずっと言ってくだけのネタだった。今は2人で言葉や手を合わせてるけど、それすらなかった。交互に悪口を言っていくってだけの不快なスタイルでしたね。
清和:僕らはそれこそ、ダウンタウンさんみたいな引いた感じのボケと、テンション上げてツッコむっていうのをずっとやってた。で、全然ウケず、周りがどんどんウケて。流れ星とか三拍子が「オンバト」出だして。
滝沢:そう俺ら落ちこぼれ組だったから。パッと横見たらエルシャラカーニいましたもんね。それで仲よくなった(笑)。
西沢:当時、「オンバト」になかなか受からないメンバーでライブやったりしてましたもんね。
清和:そこから俺らある日、もうええかって話して、そういううまい感じじゃなくて好きなネタ作ろうやって、15分くらいで作ったネタがえらいウケて。余計なことを考えてたんやと。
しろう:そう。「オンバト」で初めて受かったネタ。
滝沢:えー!
しろう:それで自信ついちゃって。そこから1回も勝ってない。
清和:そこからまた地獄(笑)。
滝沢:神様も意地悪なところあるんですよね。辞めさせないように。
清和:辞める直前にウケさせる。
西堀:今いる芸人の中で、エルシャラカーニが一番認められるのが遅かったですよね。みんなチョコチョコなんかあったけど。
清和:「オンバト1回出ました」「M-1で1回だけ準決勝行きました」みたいなのをちょこちょこ挟みながら。
西堀:ほんっと辞めないですよね。
しろう:辞めてもいいですよね、普通に考えたら(笑)。

―漫才の快感とは―
清和:これ、例えちょっとずれるかもしれないけど、あのね、コンビ感のことで言うなら、多分SEXなんですよ。めっちゃケンカするとするじゃないですか。舞台立つでしょ、めっちゃウケるでしょ、仲よくなってるんですよ、終わったあと。
滝沢:あー!
西堀:まあね。性的には思ったことないけど。
しろう:それは僕も思ったことないです(笑)。
清和:いやこれ、ほかの人に聞いても絶対言うはず。
西堀:漫才の面白いところはあれじゃないですか。すごくウケると余裕が出て来て、何言ってもウケるってゾーンに入るんだよね。
滝沢:あるねえ。
西堀:あのときの何気ない一言とか笑ってくれると気持ちよくない?
滝沢:ウケてる状態が気持ちいいんじゃないですか、やっぱり。
清和:そんなにコントはやってないけど、漫才のほうが気持ちいいんじゃないかな。「“俺が”ウケてる」わけだから。
西堀:わかるわかる。
滝沢:そう。
清和:設定の人じゃないから。
西堀:漫才は西堀と滝沢がウケてるんだけど、コントはそのキャラがウケてるんだよね。
清和:だから漫才のほうが気持ちいいはず、多分ね。トップリードに聞いたらまた違う意見かもしれないけど(笑)。

―漫才のトレンドとは―
西堀:年取ってくるとわかりますよね。これはできないなとか、これは向いてるなとか。マシンガンズとエルシャラカーニって結構違うと思うんですよ。我々がやってることとエルシャラカーニがやってることって交換できなくないですか?
清和:できないできない。
西堀:それはしょうがないというか、人が違いますからね。
清和:例えば、今センスのいいボケが浮かんでも削除する。僕らがセンスいいこと言うわけないから。自分のことがわかってきてる。それが若手の頃はわかんないんだけど。最近若手には「いろんな真似しろ」って言う。そこから見つけていくでいいと思う。しょっぱなからわかるもんじゃない。
西堀:わかんないですよね。俺やっぱりトマト持ってても腐らせますもん。
しろう:腐ってますよ(笑)。
西堀:その人たちの背丈に合わせた漫才ができていくもんなんじゃないですかね。例えば、三四郎の小宮が漫才向いてるかって言うと、昔は向いてないですよね、滑舌悪いから。でも、今はそれもそういう漫才になってるし。
しろう:しゃべりがうまいだけじゃないですもんね。
清和:その人にしかできないものが出来上がるんじゃないですか。
西堀:おぎやはぎさんがうまいかって言われたらわからないじゃないですか。でも面白いじゃないですか。芸人にウケる芸人とそうじゃない芸人っていうのもありますよね。
清和:昔、村田渚さんが言ってたのは、「芸人とか関係者とか、ここを笑わせたら、自然とお客さんは笑うんだと。いきなりど真ん中のお客さんだけ狙ってやってたら輪が広がらないから」って。最近はポップなお客さんも笑わさなあかんのかなって考えるようになったけど。
西堀:センスってやっぱりみんな違うじゃないですか。だから芸人に向けて作っててもウケる人はいるんですよね。普通に何にも考えなくても関係者にウケる人もいるし、何にも考えなくても客にガンガンウケる人もいるし。だって考えてボケてないでしょ。
滝沢:もちろん俺らは客にウケるつもりでやってますけど、たまに異常に芸人たちに大絶賛される。けど、客にすげースベるときあるんですよね。
清和:はははは!
滝沢:騙されてるんじゃねーかなって。
西堀:先日ちょっと新しいフレーズを入れたネタをやったら芸人に評判よくて、「なんだそのフレーズ」「流行るじゃないか」「流行るぞ」って言うから、太田プロライブでそのネタやったんですよ。ビリでした。
清和:えー! でもそれ別のライブではウケてたやろ。
西堀:それは客がこっちよりのライブだったから……。
しろう:お客さんにウケないだろうなって思っても自分が面白いからやりたいっていう漫才が関係者にウケるってことですよね。
西堀:いや、それも人によるのよ。
しろう:そう、人による。
西堀:おい(笑)。

―漫才師にとっての「M-1グランプリ」―
滝沢:僕はね、その頃すげーお笑いやってたんですよ。一生懸命。青春みたいな。今もやってて楽しいんですけど、ほんとに張りがあった。1年間そのためにやってたというか。ほんとに優勝するつもりでネタ作ってましたからね。
西堀:みんなそうだと思う。敗者復活はほんとに勝とうとしてましたもん。いろいろやってると、ちょっとわかるときあるじゃないですか、「これは(決勝)行けないな」とか。そういう気持ちがなかったもん。
滝沢:ないね。行けるって思ってた。
清和:へー!
しろう:僕らと違いますね。僕ら行けると思ってなかったですね。
清和:うん。準決勝も1回しか行ってないし、その年でさえ行けると思ってなかった。
西堀:あと敗者復活でスターが生まれる瞬間を横で見るっていう。
清和:それね。
西堀:なかなかその瞬間に立ち会えなくないですか。
滝沢:さっきまで友達だったのに、もう友達じゃないんじゃないかって。
西堀:名前を呼ばれた瞬間にスターになるって、こんなすごいことないですよね。みんな「自分が行けた」っていう思いはありますから、複雑な感情もありますけどね。
しろう:M-1に向けてみんな漫才やってた感じですね。
滝沢:1秒もムダにしちゃいけないくらいに思ってたよね

―漫才のいいところ―
西堀:マイク1本あればいい。
滝沢:営業もね、朝起きればいい。行けばいい。
しろう:営業とかの掴みは漫才のほうが取りやすいなと思います。
滝沢:それはある。お客さんとしゃべれるっていうのはやっぱりでかいですよ。直前のコンビをイジったりできるし。
西堀:いやでも、カッコイイにつきるでしょ。
清和:おお! 俺もそう思う。
西堀:漫才やってるのカッコよくないですか。2人で、小道具を使わないで、カッコイイですよね。カッコイイことやってるのかもしれない。
清和:そう。何なんテーブルと椅子って。
滝沢:やめなさいよ(笑)。
清和:暗転中に椅子に座るって。
滝沢:かもめんたるの悪口やめなさいよ(笑)。
清和:だったら明転して堂々と出てくるほうがカッコイイ。
西堀:潔いよね漫才は。漫才ってマイク1本っていうパッケージは変わらないですもんね。全然簡略化もされてないし。
清和:中身はいろいろ進化してるけど、そこは変わらない。
西堀:5分間ってことで言うと、やっぱり漫才が一番ウケるんじゃないですか。落語は落語のよさもあるし、お芝居のよさもあるけど、5分間だけの短距離レースだったら、漫才だと思うんですよね。
清和:そうね。
しろう:「どうもー」のとき、どうやって行ってます?
滝沢:手は叩いてないですね。
しろう:清和さんもやらないじゃないですか。僕がやるのも嫌だって。僕もほんとはやりたくないんですよ。やらないように頑張ってるんですけど、出て行くまでの間がもたなくてやっちゃうんです。本来はバーッと出てくるのがカッコイイですよね。
清和:出てきてマイクにつくまでの立ち振舞い、その様が漫才はカッコイイんだということが言いたいんでしょ。それをしろうはできなくて手を叩いちゃうと。
しろう:そうです!

―漫才師たちの将来―
滝沢:僕は1秒でも早く辞めたいですね。
西堀:俺も。まあでも、西堀がいて滝沢がいれば漫才ですから。
3人:……。
西堀:ちょっと待ってこれ使われるな(笑)。冗談で言ったので!
清和:俺は収入面とか置いとくとしたら、ずっとやりたいですね。
滝沢:えー。
西堀:年取って漫才やるとするじゃないですか、その権利がいるんですよね。ただ漫才をやるってことじゃなくて、舞台に立てて、漫才やれるっていう権利を得なきゃダメだと思う。
滝沢:でもまた神様のいたずらがあるかもしれないからね。
清和:またウケるっていう。
滝沢:辞めさせないっていういじわるを。
清和:約束するのは、60歳になって舞台に立ててるとしたら、そのときでも俺は新ネタは作りますよ。
滝沢・西堀:おー!
しろう:でもやっぱりマイクがすごいですよね。何がすごいって。マイクは変わらないわけですから。マイク1本だけは変わらない。
滝沢:どんな時代でもね。
しろう:これがやっぱり漫才っていう文化を作り上げていってる。音声がよくなってる。
西堀:……いや、途中までよかった。
滝沢:しろうさん、変なの入れなくていいですよ。
しろう:何も浮かばなかった(笑)。
 

 
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