脚本、大喜利、CMなど、マルチに幅を広げているバカリズムが、“本業”と声を大にする単独ライブ。今回は「類(たぐい)」をテーマに、「〇〇な類」のキャラが多数誕生しました。そこにはバカリズムならではのこだわりや、長年やってきたからこその苦労が。インタビューでは裏側もたっぷり語ってくれたので、まずはDVDをチェックしてから読んでください!

 

 
●今回のタイトル「類」はどこから思いついたんですか?
バカリズム:毎回タイトルをつけるときは“どうにでもなるような言葉”を基準に探してるんですが、「○○の類」ってどうにでも言いようがあるじゃないですか。だからちょうどいいんじゃないかと。ただ作ってみたらめちゃくちゃ難しかったです。「類」は「るい」より「たぐい」って読んだほうがカッコイイかなと思ってそうしたのはいいんですけど、「○○るい」のほうが言葉がたくさんあって、逆に「○○のたぐい」って普段そんなに使わないんですよね。そこからまずプロローグを作るんですけど、ネタを考えるというよりも話が合ってるかどうかの確認が大変で。そこをいかにざっくりと、間違いなく、なんとなくお客さんに理解してもらえるかというところなんですが、あれでよかったのかどうか今のところハッキリしてないんですよね。ライブに来てるお客さんは騙せてると思いますが(笑)。
 
●コントを作る作業は順調でしたか?
バカリズム:ドラマの脚本がほぼ同時進行だったので、今回も大変でしたね。一旦はライブに集中したんですが。それでも以前は単独ライブを年3回やってたんですよ。それはそれで大変で、今はそこまでネタを作ってないですが、同じくらい書くものが多いというか、書く分量に関しては今のほうが多いかな。ほんとはもっとライブがやりたいですね。年に2回くらい。やんなきゃと思ってるんです、自分のために。考える習慣とか、そういうクセを常につけとかないと、エンジンかかりづらくなるので。逆にライブのあとにはすごく言葉が出やすかったりしますね。
 
●何から取り掛かったんですか?
バカリズム:いつも最初にプロローグを作るんですが、今回すごく手こずりました。今まではスルスルっと1日2日で書けてたものが、なんかすーごい時間かかりました。テーマがテーマだけに。さらに、プロローグができてからもうまくいかなかったんですよ(笑)。実はいろんなパターンのプロローグができちゃって。これがいいのか、あれがいいのか、この進め方でいいのか、とか考えながら進めてました。
 
●逆にパッとできたネタは?
バカリズム:「友達の類」は一晩でできました。オープニングVTR明けの一本目に見るような、わりと入りやすいネタをと思って。親友に内緒にしてることを告白するというフォーマットが先にできて、それで何を告白したらバカバカしいかなと。わざわざ言うほどのことでもないことを考えました。
 
●難しかったネタは?
バカリズム:「正義の類」のネタで“ノノシリンダー”というヒーローがいるんですけど、最初「楽しそうなの思いついた」と思って、やりたいことをバーッと書いて1人で練習したあとに、何人かにそのセリフを聞いてもらったんですよ。そしたら「怖い」って言われて。要は、暴力は使わず口で徹底的に相手を痛めつけるっていうヒーローだから、きついこととかほんとにひどいことを言えば言うほど面白いと僕は思ったんです。でも周りが「面白いというより怖いという人もいるんじゃないか」とか「ひどい」とか言うので、「え?」って。でも一応笑ってもらわないといけないですから、だいぶマイルドにしました。でもこっちとしては正義なんですよ。なぜなら、悪者が地球征服というか人々を困らせようとしてるから、こっちは何言ってもいいじゃんって。暴力使うわけじゃないし、相手を殺すわけじゃないし。心の傷を与えることで成敗するっていう、ちゃんと自分の中には正義があるというか、バランスが取れてるんですけど、でも渋々マイルドに。
 
●完全版が見たいです(笑)。どこかでやりたいという気持ちはあるんですか?
バカリズム:お客さんにウケなくて引いてしまうんだったら、もうやらないほうがいいかなと。若手のときだったら「そんなの関係ねーっ!」ってやってたでしょうけど(笑)。ある程度のキャリアになってくると、スベることが許されないから、最低限の笑いをとることは前提で。大人になりました。チケット代も昔より高いですから。自分が面白いと思うものよりは、お客さん第一です。
 
●「上司の類」はどういうところから生まれたんですか?
バカリズム:よくサラリーマンのプレゼンってやってるじゃないですか。あれでなにか、わざわざ説明するほどじゃないことを細かく説明したら面白いかなと。“会社員の人が会社を辞めるプレゼンをする”という考えは、何年か前からぼんやりとしたアイデアはあったんです。けどそのときは、「バカリズム案」というプレゼン形式のライブをやってて、それとちょっと似ちゃうから辞めてたんですけど、最近「バカリズム案」をやってないから、こういう形式のネタもいいんじゃないかっていうことで。
 
●転職のCMに出ているバカリズムさんがやってるのが面白いなと。
バカリズム:そうなんですよね(笑)。偶然なんですけど。そのあと「エン転職」見てもらえれば。
 
●このキャラのように何かをぶちまけて辞める気持ちはわかりますか?
バカリズム:まったくわかんないです! 僕はお笑いをずっと20年やってるし、野球部も中学からずっと、辛くても辞めずにやり通してきましたから。
 
●「背徳の類」には変わった職業が出てきますね。
バカリズム:そのアイデアは元々あったんですが、たいして広がらなかったんですよ。映像とかドラマで見せれば多少は厚みが出て来るでしょうけど、口頭で説明するだけだといまいちで。だからボツというか置いてたんです。そんな中もう1個全然別のアイデアがあって、それを組み合わせたらちょっと面白くなるんじゃないかと。今回たまたまそれを思いついてじゃあそうしようと。アイデア料理みたいな感じですね。台所の中に置かれてた食材を使って、まったく違う料理ができましたみたいな感じ。個人的にはすごく好きなコントです。
 
●そういう風に寝かせてるキーワードはいつもあるんですか?
バカリズム:だいたいは、その前のライブのときいろいろ箇条書きにしてたネタのアイデアを見直すんですけど、そこから思いつくこともありますね。
 
●このネタのように、置いていたネタはその後解決策が見つかるんですか?
バカリズム:いや全然。どうにもならないネタとかもありますよ。台本があるのに7、8年寝かせてるネタとか。周りの人に「それ面白いからやればいいのに」ってずーっともう何年も言われてるけど、オチが気に入らなくて、ずっとそのままっていう。オチが気持ちよくないというか終われてない感じがして。一応ちゃんと終わらないと嫌なんです。若手のときによくやった、“フェードアウトで終わる”とか“その世界観のままなんかじわっと見せて終わる”っていう終わり方をあまりしないようにしていてて、ちゃんと決着つけて終わらせたい。でも何年も置いて慣れちゃって、自分ではもうぜんっぜん面白いと思えてないから、無理してやる必要もないかなと。それよりは今年思いついたもののほうが考えとかも更新されてるし面白いと思うんですよね。
 
●「反逆の類」はミュージシャンネタで。
バカリズム:ここ何年かライブに歌ネタを入れてるので、全体のバランスとして歌ネタやったほうがいいなと。こういう歌詞を書くのは、コントを書くよりババっと書けるんです。わりとサクサクっと。ほんとはこのネタ、もっとストーリーのあるものになってたんですよ。でもそうすると長くなるし、歌をもっとテンポよく見せたほうがいいな思って、歌だけで展開させてるので、見やすいんじゃないかなと思います。
 
●最後のネタ「40LOVE~幸福の類~」はどういう発想から生まれたんですか?
バカリズム:妄想だけでどんどん飛躍させてめちゃくちゃにしたいっていうぼんやりとした欲求があって。そこに何が当てはまるのかと思ったら、自分が「結婚したら奥さんってどんな人なんだろう」と想像することがあったので、それと掛け合わせてみたら面白いんじゃないかと。そんな“独身男性”について深く考えてってことでもないですし、たまたまいいフレーズが見つかって、それさえ見つかればいくらでも飛躍させられるなと。
 
●考えてて楽しかったシーンは?
バカリズム:もうどんどん気持ち悪くなってくる後半が楽しかったですね。戦いとか話が全然関係なくなってるところが楽しくて。元々そこに行きたくて作り始めてるので。
 
●VTRも盛りだくさんですが、今回はどのように進めていったんでしょうか。
バカリズム:「思いついたけどコントにするにはちょっと弱いな」とか、実際に映像を見せてこそのものだったりとか、あとはもうちょっとコントよりも気軽に見れるソフトタッチのものを選んで作りました。ライブを考える中で、いろいろ出してるアイデアの中から、映像で見せたほうがわかりやすいものですね。
 
●「類物語」は実際のエピソードと童話が少しずつリンクしているという面白い設定ですね。
バカリズム:全部実体験なので。「あのエピソードって『走れメロス』っぽいな」とか思うんですけど、「わざわざ人に話すほど『走れメロス』っぽくない」っていうのを、こういうまとめ方をすれば見やすいんじゃないかと思ったんですが、たまたまうまくいきましたね。ただ僕は、リンクしてるパーセンテージが低ければ低いほど好きなんですよ。全然話がリンクしてない中に、チラッと“っぽさ”が出たときが面白いんですけど、でも会場ではお客さんの反応が逆で、そのリンクしてる部分が多いほど笑ってましたね。
 
●長年ライブを続けてますが、ライブに向かうテンションは昔と比べて変わってきてますか?
バカリズム:部活で言うと辛い夏の合宿に入るみたいな感覚ですね。大変は大変なので、「よっしゃー! ライブでこれを表現しよう!」とかいう感じではないんですが、元々僕にそんな感じもないかもしれないですね(笑)。でももうライブは絶対やらないといけないと思ってます。
 
●最終公演が終わったあと、バカリズムさんはいつもどうされてるですか?
バカリズム:何年か前までは、ライブ後2,3日休みだったりしてたんですけど、去年くらいから翌日は仕事してたりとかするので、もう普段通りですね。今回はこのライブ終わった翌日から、待っててもらった締め切りものとかやって。ライブに関しては自分が勝手にやってることだから、その分を取り戻す作業というか、余韻に浸る時間はまったくないです。逆にそれでよかったです、すぐに脚本の続きに入れたので。
 
●ピン芸人さんはコンビと違って、分かち合うという感じではないですよね。
バカリズム:そうですね。ピン芸人が複数でやってる芸人たちよりも労力がたくさんかかっていて、ほんとに大変なことをやってんだぞっていうのがいまいち伝わってないので、そこをわかってほしいです(笑)。
 
●最後に読者にメッセージをお願いします。
バカリズム:とにかく一番本業中の本業なので、ぜひ見てほしいですね。いっちばんの本業です、これが(笑)。こういうことを普段やっていますってことです。
 

 
 
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