「今までで一番時間がなかった」という中でも傑作コントの数々が誕生した「ぎ」。脚本業に追われ多忙な日々を「しんどい」と振り返りながらも、お笑い以外のフィールドでの活動も含めこのライブが完成したことを実感しているようです。深い、でもシンプルなバカリズムの頭の中をぜひこのインタビューで覗いてみてください。

 

 
●この1年もドラマの脚本などご活躍ですが、単独ライブの準備に時間はとれましたか?
バカリズム:今年は今までで一番時間がなくてしんどかったかもしれないです。前回の「類」から、すぐに「黒い十人の女」に入って、年明けて「住住」が始まったんですよ。そのあと「架空OL日記」で、「ぎ」の制作までずーっと続いたままというか。「ぎ」が終わってもすぐ「FNS27時間テレビ2017」内のスペシャルドラマの脚本を書かなきゃいけなくて、そのスタッフさんが楽屋に挨拶に来てくださったんですが、そこでもう「終わってすぐこんなこと言うの申し訳ないんですけど、すぐに取り掛かっていただいて……」って状況で。丸々1年まったく休みなく書いてました。ずっと脚本書いてるのはしんどいんですけど、でもお話をいただけるのであればずっとやっていきたいですね。
 
●「架空OL日記」は「ギャラクシー賞」2017年6月度月間賞を受賞しましたね。
バカリズム:これ、なぜかあんまり世間で言われてないんですけど、すごいと思うんですよ。すごいですよね? 最初主役は女優さんになるのかなと思ったんですが、それだとただのOLドラマになっちゃうからどうしようって悩んだ結果、「僕がやればいいんじゃないですかね」ってことで、それで全部解決した感じです。女性役といえど、演じないほうがリアルに見えるだろうなって感覚がなんとなくあったんで、結局ほぼ演じてないんですけどね(笑)。
 
●ドラマのお仕事が単独ライブにフィードバックされますか?
バカリズム:されてると思うんですよね。ハッキリ「ここが」ってわけじゃないんですけど、昔よりは全体的にうまくなったと思いますね。過去のネタを見ると、構成とか展開のさせ方とかが荒かったりするし、脚本を書くようになってから色々身につけたなっていう感覚はあります。単純に書く量なのかもしれないですけどね。ネタの場合は長くても10分、15分ですけど、ドラマの場合は30分から1時間のものを10話にわたって書いていかなきゃいけないじゃないですか。その中で、どうやって飽きないようにするかとか、ピークをどこに持っていくかとか、そういう構成力はうまくなったんじゃないかなと。
 
●ドラマの脚本と単独ライブのネタではどちらのほうが大変ですか?
バカリズム:やっぱり単独ライブのほうがよっぽど大変ですね。結局ネタを書くのが一番大変だと思います。こうハッキリ言っちゃうと脚本を書いてる方に失礼に聞こえてしまうかもしれないんですが、あくまで僕個人としては圧倒的にネタを考えるほうが大変。単独ライブは目の前のお客さんがハッキリと笑い声をあげないといけないので。初日迎えたあともセリフが抜けないようにずっと朝から練習してますよ。1人でずっとただ繰り返し練習練習。僕、セリフだけで覚えるの怖いんですよ。機械的に覚えるんじゃなくて、ちゃんと意味として覚えたうえで、その場で自分の言葉で言うって覚え方をしないと、セリフが突然飛んじゃったり、間違えたりしたときの修正ができないんです。セリフを決めてはいるんだけど、そのときのテンションによってはその言葉がしっくりこなかったりして、なんとなく舞台上で反射的に別の言葉を選んじゃうと、そのあとのリズムも変わっちゃうっていう。咄嗟に言葉が出ないというよりも「どれにしよう」っていう瞬間があって、「どの言葉が一番適切なんだろう」っていう選択を何秒かでやんなきゃいけなくなったり。分量も多いので大変ですね。
 
●前回のタイトルは漢字1文字で「類」でしたが、今回はひらがな1文字で「ぎ」ですね。
バカリズム:字面的には「の」のほうが好きだったんですけどね。結局、“漢字にできる”ってところで「ぎ」になったんです。「擬人化」とか「疑惑」とか、「ぎ」がつく言葉が多かったので、じゃあ「ぎ」にしようかなと。逆に「の」って意外と難しかったんですよ。「〇〇の〇〇」とか助詞の意味合いが強くて、「の」でライブを作るとなるとそんなに幅広い感じがしなくて。「ぎ」は音としてもおもしろいですね。
 
●プロローグから作り始めるとのことですが、今回はスムーズに出来ましたか?
バカリズム:出来上がるのは、わりと早かったかもしれないですが、プロローグの時点で結構苦労はありましたね。ほかのコントは最初からそれぞれの役でその世界が始まるんですけど、プロローグに関しては自分がしゃべり始めて徐々に役に入っていくっていう、要はフェードインしていくので、そこをどういう入り方しようかと。過去のライブでもだいたいそういう入り方をしていて、いろいろ手を変え品を変え役に入ってたんですけど、じゃあ今回はどうしようかと思って、「擬人化でいきなりしゃべっちゃえ」みたいな感じに。それで、役に入ったことをはっきりわかりやすくするために「じゃあもう後ろに『ぎ』って文字を出そう」とか、「照明を変えよう」とか、落語家さんだったら上着を脱ぐみたいな、何かしらこう目印というか、「入ったな」というのが欲しいなと。文字のサイズ感とかも全部想像してもらいやすいようにしました。
 
●今回一番最初にできたネタはどれですか?
バカリズム:1本目のコント「過ぎてゆく時間の中で」ですかね。なんとなく1本目っぽいネタを考えようという感じで、ちょうどいい尺で設定のわかりやすい入りやすいコントを。一番大変だったのは最後のコント「疑、義、儀」。結構長かったので縮めるのが大変でしたね。ほんとはもっと掘り下げて行きたいんですけど、ある程度のところにしとかないとお客さんが飽きちゃうから。作ってるときはこんなに長くなると思ってなくて。やってみたらこれはもっと書かないといけないってなって、そしたら逆に長くなって、コンパクトにしなきゃと。これは映像化した場合わりと表現できるんですけど、いかんせん登場人物全部僕1人でやるのは結構限界があって。1人で表現すると、お客さんの集中力が途切れた段階でもう想像してもらえなくなっちゃうというのもあるので、できるだけ短く。そのへんはほんとコンビの人たちより気をつけないといけないとこかなと。
 
●「難儀と律儀」はどういうところから?
バカリズム:僕の常套手段ですね、こういう言葉遊びは。なんかよくあるじゃないですか、そんなに複雑じゃなくてシンプルで。なんならちょっと楽してるかもしれない。自分の中にある引き出しでネタ作った感じですね。言葉をいろいろと調べたりしながら作ったんですが、これもいかにお客さんを飽きさせないか考えましたね。
 
●「ふしぎ」の舞台は業界ネタですね。
バカリズム:これ、一般の人はこれ知らないですよね(笑)。番組収録の前ってスタッフさんが出演者さんの役になって、立ち位置とかカメラリハーサルをやってるんですが、僕それを見るのがすごく好きなんです。番組によっては本番さながらの進行をやったり受け答えをやったり、それがツボで。淡々とやる人もいれば、そこの演者さんに合わせたキャラをノッける人もいたりして。その世界観をやりたいなって思って作ったネタです。ほんとはこのネタ、何人かでやりたいんですけどね。1人でやるのは限界があったんですが、どうしてもやりたかったのでやりました。
 
●プロローグからの「の」ネタなんですね。
バカリズム:なんか感覚的なもので、響きが面白いなってだけなんですけどね。最後のオチが見つかったので「じゃあやろうか」って踏み切った感じで。オチが決まってなかったら多分やらなかったかも。ちょっとあまりにも不条理というか、無茶すぎるかなとは思いました。そういうネタでも10年前だったら全然平気でやったんですけど、今やるにはちょっとなんか乱暴かなと。理由が見つからないままやってしまうと、もし笑いの量が変わらなかったとしても、個人的には納得できないでしょうね。
 
●「六本木の女王」は、何か思うとこがあって作ったのでしょうか?
バカリズム:僕自身はまったくこういう趣味はないんですけどね(笑)。客観的にMの人を見て、「突き詰めるとこういうことでしょ」って考えたことがあって、そこからできたネタですね。題材が題材だけに下ネタっぽくなるのは嫌だったので、いかにクリーンにやるかというところは考えました。しかも一人二役ですから。部屋の中で、一つの衣装に固定しての一人二役だから、その見せ方は苦労しましたね。
 
●お笑い好きには「死亡遊戯」はすごくツボなのではないでしょうか。
バカリズム:漫才のネタで「じゃあやってみよう」って言うのが、自分にとって珍しい文化というか、僕にない感覚で。「あれって漫才でしかない状況だよな。舞台上なのに『人前でやってみる』ってなんなんだろう」って考えたことがあって、「実際の日常生活で『やってみよう』って言われたらどうなるんだろう」ってところからです。それだけ異常なことなんじゃないかと。そこだけがやりたかったんです(笑)。
 
●「ぎ」を改めて映像で見たときの感想は?
バカリズム:毎回映像を見るたびに思うんですけど、やってた感覚と映像を見る感覚は違うんですよね。演出も僕なんですけど、それこそ照明とかも、要は自分の照らされ方しか知らないんですよ。映像で見て初めて「こういう風になってるのか!」とか、「ここにこういう照明を入れてくれてたんだ」とかわかったり、毎回不思議ですね。
 
●このDVDのオススメの見方を教えて下さい。
バカリズム:「ぎ」という意味深なタイトルでいろんなことを想像して、深い意味があるんじゃないかとか想像しつつ、実際に見たらこれといってなんもないっていう、そういうバカバカしさを楽しんでほしいです。
 

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